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評価:
美奈川 護
アスキー・メディアワークス
¥ 599
(2010-02-10)
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人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている―。アート・テロリスト『破壊者』の目的とは!?第16回電撃小説大賞金賞受賞作。
(Amazonより)
面白いことは面白い。
作者のやりたいこと、意思が垣間見える。そういう意味では、悪くない。
ただ、設定を始め、詰まっていない部分が多い。
詰まって無くても良いタイプの作品であれば気にしないところが、映画的・写実的な近未来作品のため、余計に気になってしまうのである。
初版が2010年2月。
非実在青少年問題という時勢もあって、「絵」だけの取り締まりという現実味の無い設定がどうしてもひっかかる。ほかのメディアは?アニメと漫画を規制しようとする(その余地を十分に残した)東京都の条例について揉めているこの一年間に出てきた作品としてはちょっともったいない気もする。
つまり、現実社会の問題をフィードバックするタイプとしてのエンターテイメントに「なりえた」。
が、そうするには先ほどの、規制が芸術だけ?という部分も含めて色々あって…甘い。
(そもそも絵師が戦場にいるよりも戦場報道スタッフの方が現実味があるではないのか!など)
かといって、そんなことを言わなくてもいい、もっとユルいファンタジーやSFでもない。
音楽の規制もシーンとしては出てくるが、クラシックよりもポップスの方が際立つはず!
芸術よりも猥雑な雑誌や漫画などのことに触れたって無駄ではないはずだが、どうしても触れられなかった理由が、何かあるのだろう。
タイミング的に受賞作品としては「幕末魔法士」と争ったようだが、そういう意味での思い切りは「幕末〜」の方が個人的には面白いし、人には勧めやすい(おそらくは、だからこそ僅差がついたのだろう)。
が、2010年11月現在、「幕末〜」の続巻はリリースされず、この「ヴァンダル〜」は3巻まで発行されている。
何がどうなるかわからない、エンターテイメント業界の皮肉さと興味深さを見ることが出来、そしてこの作品の持つ魅力が現れている結果なのかもしれない。