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評価:
森 深紅
講談社
¥ 945
(2012-08-07)
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全寮制の女子校・遠海学園には「人魚姫の禁忌」と呼ばれる三大校則がある。中等科三年生の瞳子
は、水族館に通ううちに、展示生物に付けられた管理番号が気になりはじめる。同級生の遊砂も、生徒一人ひとりに振られた数字の謎を追っていた。はたして少女たちの運命は?―。
(Amazonより抜粋)
※ネタバレ御免※
知人より頂戴したので、ラノベはおいといて久しぶりに一般の新書を手にしました。
学園を舞台にした…とあるもの、実は私たちの思うような学園ではなく…というあたりのフワフワっとした足元があやふやになる不安感がサスペンスもののようで、しかし基本の仕掛けはSF。
序盤のマリみてかと思うような耽美な雰囲気が作中ずっと継続され、淡々としているようにも感じる静かな感覚は(登場人物が女性ばかりなのもあってか)作品全体に女性的な印象を持たせます。
それでも中盤のヒロインたちが謎に迫るあたりのドキドキ感はたまりません。
ぐいぐい読ませてくれます。まあー最後まで一気読みですよ。
個人的にはキャラ立ちしているラノベばっかり読んでいるので、中盤以降のSFサスペンスたるゆえんのもう一組のヒロインたちとの出会い以降のシーンは、そういう意味ではもったいない印象も。
もうちょっと「似てる」演出は出来たのかも…?
(こう書くとラノベ的なものが良いという意味にも見えるなぁ…それもちょっと違うなぁ)
下世話にラノベなどでいえば、土橋真二郎の殺戮ゲーム的な雰囲気かと思いきや、中盤で眉村卓のねらわれた学園のようでもあったし、最後は平成ライダーシリーズの井上脚本のように雰囲気とテンポ重視で風呂敷(伏線や序盤の設定)をたたまずに放り投げてしまっていたり。
いい意味で読者が作者に翻弄されてしまい、その分、夢中で読んだ!という満足な読後感を得られます。
ラノベなどで余韻を残さないハッキリとした結末を多く読んでいたり、男性は設定スキーなので設定や伏線はどうなった!(この場合は管理番号や世界の謎)というところがあるんだけど、これは一般新書読者なら気にしないでクリアできるのかな。
もし今後、同じレーベルで森深紅の新刊が出るぞー、となった場合、この本の続編(解決編)が出るんだよね?と思う読者がいても不思議では無いんではあるけれど…。
男性は(前述したけど)設定好きだから続編が気になるし、女性は雰囲気や抽象的に表現された世界観が気になるだろうから、これで終わりでかまわない…とか、かな?
しかし1冊のもつ雰囲気、空気感の持続する感じは良かった。
最後のループする感じの締め方は好みが分かれそうだけど、この場合はやはり似た違う二人の物語を示唆させてるように感じたので、これは好みな終わり方だったんだよね〜。